BAR 「圏外」 1

私の名前は東雲憲司。

40手前の会社員。

妻や子供はなく1人やもめの気ままな独身だ。

趣味と言えば仕事帰りに馴染みの小料理屋に足しげく通うくらいの寂しい男。

さぁ臨時収入が入ったから女将に会いに行こう。

 

競馬で万馬券が当たった。
普段競馬などやらないが友人のススメで買ってみたら1000円が30万になった。

何か買えばいいのだがあいにく趣味と呼べるものがない。

買った馬の名前がシノブブラックだった。

これは「えふぇくと」に行けという暗示なのか。。

自然と足は「えふぇくと」に向かっている。

 

 

!!!!!!??!!!!

 

 

休み。。。。。。

 

 

休みだと。。

 

仕方ない。
他の所で1杯やって帰るか。

他の所かぁ。
ここ10年は「えふぇくと」以外に行ってないのでどこにするか迷う。

 

フラフラしていると、

 

 

ドン!!

 

女性と肩が当たった。
女性の手から荷物が落ちた。

慌てて私は荷物を拾い女性に渡した。
20代半ば位だろうか。。
目がパッチリとして綺麗な女性だ。

 

「すいません」

 

「いや、私の方こそ申し訳ない」

 

「ボーッとしてたもので。。」

 

「私も行き先が分からずフラフラしてまして。。」

 

「えっ。そうなんですか?」

 

「馴染みの店がお休みで違う店に行こうと思ったんですがこの辺の他の店知らないので」

 

「それでしたらオススメのお店あるんで一緒に行きません?」

 

「一緒に?いいんですか?」

 

「すっごい料理が美味しくてリーズナブルなお店なんですよ」

 

「でしたらご馳走しますので是非お願いします」

 

 

奇妙な形で20代の女性と食事に行くことになった。
お店まで他愛の無い話をして5分程歩くとお店に着いた。

 

 

BAR「圏外」

 

 

少し裏道に入った半地下にある小洒落たBARだ。

カランカラン

 

いらっしゃいませ。

 

マスターは3~40代だろうか。
口髭を蓄えたいかにもマスターという風貌である。

 

 

顔がムカつく。。。

 

カウンターに座りとりあえずいつも通りコーラを頼む。

 

 

!!!!!!!!

 

 

ペプシだ。
まさかここでもペプシが来るとは。。

 

 

女性はカルアミルクを頼んでいる。
聞くと25歳のOLで地元は福岡らしい。

なんやかんや楽しくお話をして小腹も減っていたので聞いてみた。

 

「オススメの料理ってなんですか?」

 

「枝豆です」

 

「・・・・・・・・・・・・えっ?」

 

「枝豆です」

 

「他には?」

 

「無いです」

 

「じゃぁ枝豆で」

 

ここまで来るとそーゆー星の元に生まれたとしか思えない。

 

しばらく談笑してると女性が席を立った。

 

1人寂しくコーラもといペプシを飲む。

 

 

 

30分後
戻って来ない。。。

 

 

1時間
戻って来ない。。。。

 

 

帰ろう。。。

 

 

「マスターチェックで」

 

 

「30万です」

 

 

「えっ?」

 

 

「30万です」

 

 

「いや、だって、ドリンク3杯位と枝豆で。。。」

 

 

厨房の方から白竜みたいな人が出てきた

 

 

「はっ!!」

 

 

ボッタクリバーだ。。。

 

30万払った。

 

僕はこーゆー星の元に生まれたんだと悟った

 

もう若い女性には付いていくまい。

 

あぶくゼニが泡のように消えた。。

 

次はいつ行けるだろう。。

 

 

「えふぇくと」に。。。